Tuesday, August 02, 2011

クレンペラー指揮フィルハーモニア管の「ベートーヴェン交響曲全集」を聴いて


♪音楽千夜一夜 213

EMI盤とは違って、しかし同じオケを指揮してのベト全曲。1960年のウイーンライブがアンドロメダから新たに24ビットでリマスターされたが、さしたる感動はなかった。

前者はスタジオ録音、後者はライブ1発録りということで、当然これに凱歌が上がるはずと期待しすぎた反動か。合唱のテンポの遅さなど聴いていて心がワクワクするが、その割にフィナーレのコーダではてんで感動が湧かないのである。

この指揮者のベト演奏のお薦めは、わたし的にはアルカイダ盤による10年後のニューフィルハーモニア管とのベト1番、3番で、これは彼のドイツでの最後の演奏となったが、泰然自若たる歩みの物凄い物思い深きエロイカ。それがベートーヴェンのどの曲なのかも忘れ、どこか幽明の彼方に、されど心楽しく引きずり込まれていくという大演奏。また1964年にベルリンでベルリンフィルとやった壮絶な5番と6番のライブも忘れ難い。

感興を催した時のクレンペラーとクナパーツブッシュは、あのフルベンもついていけない恐ろしい演奏をする。ところがいまどきのクラシック愛好家は、なぜかこのように人心を震撼させる世にも恐ろしい名演奏を忌避して、耳触りのよい、無内容で、小市民的で、予定調和的な、例えば小澤征爾やメータやサバリッシュやブロムシュテット、アシュケナージや準・メルクル,金聖響などのような凡庸な指揮者の音楽を好むのだから、ふるっているわな。馬鹿も休み休み聴けといいたい。 

魚屋は死んだ魚を肉屋は死んだ動物を八百屋は死んだ植物を売る 蝶人

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