Tuesday, December 25, 2007

ある丹波の女性の物語 第37回 大阪

遥かな昔、遠い所で第59回

 9月22日に次男が生まれた。産湯を使うと、一番大きい盥にいっぱいになるような大きな子であった。

 その後、商店街は次々店が開き、戦前の体裁がととのうようになった。
 我が家も夫の就職口もなく、店を再開しょうと私は父と大阪へ仕入れに行った。梅田の駅を降り、堺筋から難波まで市電に乗ったが、途中只1軒、山中大仏道という仏具屋の真新しい、大きな建物が目立つだけで、北から南まで一面の焼野原であった。
父がこの土地を今買っておきたいものだ、といったのを、大阪へ行くたびに思い出し今昔の感にたえぬ。

 一応商品が揃うようになってからと思ったので、他の業者より一歩おくれたけれど、履物店を再開した。おかげで、昔からの信用もあり、女の子1人をおいたけれど、花緒をたてるのが間に合わず、外へ出して頼む程よく売れるようになった。

 23年7月には長女が生まれた。父の思い通り、眞善美の3人が揃ったわけである。
 継母は相変わらず床に就く事が多かったが、夫は健康を取り戻し、店の仕事にも次第に慣れては来たが、初めての経験なので、父を頼りにし、自然父と娘が店の主流になる事が多かった。

露地裏に 幼子の声 ひびきいて
 心はずむよ おとろうる身も 愛子

戸をくれば きんもくせいの ふと匂ふ
 目には見えねど 梢に咲けるか 愛子

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