Saturday, December 01, 2007

ある丹波の女性の物語 第24回 修学旅行

遥かな昔、遠い所で第46回


 そんな中でベルリンオリンピックがあり、日中戦争も激しさを加えて行った。

 昭和12年5月には、憧れの東京への修学旅行が行われた。あらたに、伊勢神宮参拝がプログラムの最初に加えられ、東海道線を横浜へと向かった。車窓いっぱいに迫って来る富士山に感激し、横浜港では外国航路の船に胸をときめかせた。

 山下公園では、この近くで私は生まれたと聞いていたので、特別のなつかしさを覚えた。
 東京駅へ向かうべく、桜木町駅で待っていたら、「どこから来た」と声をかけられた。「綾部」と答えたら、「大本教か」と云われて一同大憤慨したのを思い出す。

上野駅近くの旅館から夜の自由行動で、とにかく銀座へ行こうと地下鉄に乗ったのはいいが、何丁目で下りたらいいのか分らなくて困った事もなつかしい。
東京見物の後、東照宮、華厳の滝を見て中禅寺湖畔に泊まった。新舞鶴の遊郭の娘さんが、靴下の中に内緒で百円札を入れていたのには驚いた。舞鶴は軍港景気に沸いており、沢山の娼妓さん達からのお餞別との事だった。私も近所のお土産に木彫のお盆を求め、洗濯物にくるんで小包で家へ送った。
女学生らしい学校生活もそれまで位で、追々戦時体制へと移って行くのである。

♪老祖父と 共にくぐりし 古き門            
 想い出と共に こわされてゆく
♪暮れやすき 師走の夕べ 家中(いえじゅう)の
 あかりともして 心たらわん

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