Friday, December 14, 2007

ある丹波の女性の物語 第34回 敗戦

遥かな昔、遠い所で第56回

 8月15日正午の終戦の放送は、ほんとにホットして開放されたという思いがした。
 灯火管制がなくなり、明るい電灯の下で、晴れがましいような思いで夕食を食べた。
 その記憶はこの間のように、ハッキリ思い出す事が出来るのに、その前後の事は、突然フイルムが切れて、何コマかがとんでしまったように思い出す事が出来ない。

 東京で一人で病んでいた夫を、父が迎えに行った事、大阪への転勤が決まり一時、東京の荷物を京都まで運び、その後綾部へ戻した事等が、どんな順序で、いつ行われたのか、どうしても思い出す事が出来ないのは、どうした事なのだろう。

 無我夢中の言葉をそのままに、とにかく長男を加えて、父、継母、夫、私の5人の、今までとは全然ちがった生活が始まったのである。

 そして食糧難時代もいよいよ本番を迎えた。食糧の配給はおくれながらも続けられたが、バケツ一杯の砂糖であったり、とうもろこし粉であったり、今までの主食の観念をまるきりかえてしまうような事もあった。

 それでも戦争に負けたのに、何の危害も加えられず、いままでの敵国から食糧が配給され、無事に日常生活が出来た事を、だれもが一応は感謝していた。

♪拡がれる しだの葉かげに ひそと咲く
 花を見つけぬ 紫つゆくさ


♪拡がれる しだの葉かげに 見出しぬ
 ひそやかに咲く むらさきつゆくさ

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