Tuesday, March 09, 2010

ハイティンク指揮ベルリン・フィルで「マーラー第3番」を視聴する

♪音楽千夜一夜第115回


マーラーのニ短調交響曲は、全部で6つの楽章で構成されています。はじめの3つの楽章は、じゅげむじゅげむちんぷんかんぷん、一体何が言いたかったのかマーラー自身もよく分からなかったと思いますが、アルトが深々と「おお人間よ、気をつけよ!」と神秘的な第一声を発するやいなや、複雑怪奇な楽想はがぜん精気を取り戻し、続く子供たちの天使の歌や女声合唱が、彼岸へのあこがれを高らかに歌い上げるのです。

そうしてこの興奮が一段落してから、現世を生きる事の喜びと悲しみがニ長調4/4拍子で奏される終曲で切々と歌われるのですが、ここにこそ彼の本領が発揮されるのです。

最初の3章こそいささか平板な演奏にとどまったとはいうものの、ベルナルド・ハイティンクは海千山千のベルリンフィルを率いて、この屈指の難曲を見事に演奏してのけます。長らくベイヌムの薫陶を受けて老成したこのオランダ人は、かつてギュンター・ヴァントの晩年がそうであったように、ただ書かれた楽譜を忠実に辿るだけで、作曲者の夢見た世界をありのままに私たちに手渡してくれる融通無碍の境地に到達したようです。

フローレンス・クイヴァーのアルト独唱、テルツ少年合唱団、エルンストゼンフ女声合唱団のアシストを得たベルリンフィルが、1990年12月にベルリンのフィルハーミニーで演奏した映像を、いまはなきフィリップスレコードがライブ収録したものです。


わが息子指差し「あんな児には近づかないのよ」と教える母親 茫洋

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