Wednesday, March 17, 2010

フランツ・ウエルザー・メスト指揮チュウリヒ劇場管「ドン・ジョヴァンニ」を視聴する

♪音楽千夜一夜第119回

止せばいいのに、昨日メタメタに悪口を言った同じ指揮者と団体によるモーツアルトを聴いてみました。これも序曲が軽薄そのもので、テンポだけはいっちょまえにフルトヴェングラーと同じくらいの遅さですが、コクもタメもないまるで蒸留水のような演奏。お前ワルトトイフェルでもやるのかよ。

レポレロの「カタログの歌」など、私がこれまで耳にした中でも最低に近い演奏で、やれやれどうなるのかと思っていたのですが、そこはほれさすがは器の広いモーツアルト、幕が進むにつれて次第に様になってきて、村娘ツエルリーナとドン・ジョバンニの2重唱などはそれなりに聴かせてくれました。

しかし「魔笛」のパパゲーノ役ならともかく、サイモン・キーリンサイドの表題役などは、明らかなミスキャストというべきでしょう。マリン・ハルテリウスのドンナ・エルヴィラ、エヴァ・メイのドンナ・アンナ、アントン・シャリンガーのレポレロ、ラインハルト・マイヤーのマゼットもすべて2、3流の歌うたい。いや別に3流でも4流でもいいのですが、モーツアルトならでは、オペラならではの劇的感興がかけらもない演奏です。

スヴェン・エリック・ベヒトルフという人の演出は間口が狭いこの劇場の奥行きを深くしてうまく幕で仕切って何層かの構造をつくり場面転換に創意工夫を見せていましたが、所詮はそこまで。天啓と霊感はついに最後の最後まで訪れない典型的な凡演でした。

それなのに馬鹿っ面下げて「ブラボー!ブラボー!」を連発しているチュウリヒ劇場の観客は、まるでどこかの国のそれに似ているようで覚えずぞっとしました。にもかかわらずこのフランツ・ウエルザー・メストという若い指揮者の評判は欧州では上々のようで、悪評嘖々だった小澤征爾の後任としてウイーン国立劇場の音楽監督に就任するとか。

こんな吹けば飛ぶよなお兄ちゃんなら、ティーレマンやガティやパッパーノの方が百層倍もマシだと思うのは私だけでしょうか。

♪あの小澤のあとにメスト!ウイーンオペラの歴史と伝統ここにパッタリ尽きたり 茫洋

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