♪音楽千夜一夜第124回
古いレーザーディスクを引っ張り出して、DVDに焼きながら珍しい演奏を聴きました。
コーリン・デービス指揮コベントガーデンのロイヤル・オペラが少人数で演奏するベンジャミン・ブリテン作曲のオペラ「螺旋の回転」に、ペートル・ウエイグルという人が屋外ロケの映像をつけたものです。
グラードボーンに良く似た緑の草原の中に古い洋館と教会が建っていて、その建物の内部や何エーカーという広大な敷地のあちこちを贅沢に使い、ヘンリー・ジェイムズ原作のこのSF的小説を一篇の映像詩に仕立て上げています。
物語のあらすじは、家庭教師として古い洋館にやって来たヒロインが、その館に住む少年少女に宿る死者の霊と対決し、勝利を収めたものの最後の最後に少年が息絶えてしまうという西洋によくある怪奇譚です。
美しい女優とハンサムな男優が演じ、彼らの口パクの歌を、実力派のヘレン・ドナート、ロバート・ティアーズ、ヘザー・ハーパーなどが歌っていますが、ラストではそれなりに盛り上がるものの、原作におけるネジがギリギリと回転して、恐怖に慄く登場人物たちを抜き差しならぬところまでギリギリ追い詰めていくような臨場感はありません。むしろ、のどかな野外劇といった趣が強く出ています。
ブリテンの作曲の腕の冴えは、第2幕の第13のバリエーション、第6シーンにおけるピアノ連打の劇伴において最大限に発揮されており、ここぞとばかりにたたみかけるコーリン・デービスの指揮も見事です。
♪春日遅遅日光写真待つ心 茫洋
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