Friday, December 09, 2011

ジョルジュ・プレートル指揮ウィーン響の「マーラー交響曲第6番」を聞いて


♪音楽千夜一夜 232

これもさきの「交響曲第5番」と同じようなことがいえる純音楽的な平成の名演奏だ。

しかし何回聞いてもこの音楽のどこがマーラーなのだろう? この手法なら別にマーラーならずとも、ベトちゃんだってシュバちゃんだってバハちゃんだって、誰だっていける。はずだ。

その一端が先般のウイーンフィルのニューイヤーコンサートではしなくも示され、従来とかくマリアカラスの劇伴プロパー担当者などといちじるしく軽んじられていたこのフランス人指揮者の驚くべき才能を、世界中が再認識したわけだ。これは現在トップを快走するヤンソンスでさえできないであろうような最高水準のマーラー演奏でげす。

しかし、しかしだ。残念ながら、そこには彼の専売特許である「世界苦」のかけらも見当たらない。「世界苦」のないマーラーなんて、まるで魔羅のない男のようなものだ。

私は演奏や録音は悪くとも、人世いかに生きるべきか、いかに世界と相亘るべきか、と激烈かつ神経衰弱的に憂悶する息も絶え絶えのマーラーを、(どちらかひとつを選べといわれたらば、だ)聞きたいな。

「カチューシャ」の転調していくところが好きなんだかワクワクしてくるから 蝶人

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