Monday, December 05, 2011

黒沢明監督の「羅生門」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.175

有名な芥川の短編「藪の中」と「羅生門」を脚色した内外で有名な映画です。森の中で居眠りしていたならず者の三船敏郎が、通りがかりの美女京マチ子の脚(ちょっと太い)を見て欲情を催し、夫の侍、森雅之を襲って縛りあげてその目の前で強姦し、その後侍が死体で発見された事件の真相を、羅生門で雨宿りしていた僧や下人らが推理するのです。

検非違使に捕縛された野盗多丸、探し出された美女、死んだ夫(イタコが冥界から呼び出す!)、そして現場に居合わせた下人の目から見た4つの真実が順番に紹介されますが、結局は最後の証言がいちばんほんとうに近いものだというのが、この映画の解釈なのでしょう。

男のいいなりだった従順な女性が、とつじょ現代女性のような感覚で2人の男性を罵倒し、これをきっかけに2人の決闘がはじまるが、刃傷を恐れるそのカッコ悪いチャンバラが最大の見どころ。こんな男なら女も愛想を尽かすでしょう。

そもそも芥川の原作は頭のいい閑人のひねくれた知的遊戯のようなもの。最後の羅生門でのとってつけたようなエピソードは蛇足ですし、ボレロを下手にコピーしたような早坂文雄の音楽はいうもとちがう最悪のやっつけ仕事。ゆいいつの見どころは森の光と影の高速移動撮影でしょうか。

貧すれど貪するなかれ羊雲 蝶人

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