♪音楽千夜一夜 第219回
この人はいかにもインテリの音楽をやったヴェネツイア生まれのマエストロでありました。
ここでは1番から未完の10番までの交響曲に加えて「大地の歌」や「亡き子をしのぶ歌」など歌曲の代表作までマーラーの管弦楽曲を手兵フィルハーモニア管弦楽団の劇伴で12枚のセットに組まれ、なんと1枚300円の格安プライスで聴けます。
いずれも複雑でときどき怪奇でさえあるスコアを徹底的に読みこんだ演奏で(なんちゃって)、彼のタクトから流れ出す音の調べはいささかの晦渋さもとどめず、この曲を作ったマーラーがまるで私の隣家に住んでいる普通のオッサンのように思えてくるから不思議である。
2001年にベルリン・ドイツオペラでカルメンの第3幕を演奏中に心筋梗塞で54歳で急逝したシノーポリは80年代にはよく我が国を訪れ、お得意のマーラーなどを振っていました。
当時私はクラシックなんかよりインディーズのロックに心酔していたのですが、ある夜新宿ロフトのケラの「有頂天」の超満員酸欠ライヴで会場最前列左端のアルテックの巨大モニタースピーカーに押し付けられ、ために右耳の鼓膜を破られてしまいました。
忘れもしないその翌日がシノーポリ・フィルハーモニア管コンサートで、マーラーの5番が演奏されたのですが、いくらサントリーホールの2階席中央で耳を澄ませても4楽章のアダージェットが聞こえてこないのにはじつに閉口しました。
その思い出の5番も聴ける本全集ですが、今回私がもっとも感銘を受けたのはドレスデンのシュターツカペレとの「大地の歌」。これはワルター、クレンペラーと並ぶ名演奏だと思います。
とどのつまりあんたのその崇神と愛国とやらがもっともっと大切なものを滅ぼすのだよ
蝶人
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