Tuesday, September 27, 2011

アイザック・スターンの「ベートーヴェン選集」を聴いて


♪音楽千夜一夜 222

スターンのヴァイオリンはいつも明朗闊達でメロディをよく歌わせるが、時折音程に不安があり、ピアノやチエロとのハーモニーに無神経なところも散見するのは、彼に私淑した徳永二男にちょっと似ている。また芸格は超一流とはいえないが、人柄が素晴らしいのはかの小澤征爾にちょっと似ている。

彼の音楽を聴いていると、拳銃をぶっ放すがなかなか的に命中しない人の良いニャロメの保安官とか、なまくら大刀を引っこ抜いてたちまち宮本武蔵に切り伏せられる吉岡清十郎を思い出すのは、さだめし私だけだろうな。

なんだか悪口ばかり書いてしまったようだが、一枚二〇〇円そこそこの九枚組でベートーヴェンの協奏曲からソナタ、トリオの全曲をくつろいだ雰囲気で聴けるのはうれしい。ユージェーヌ・イストミンのピアノがときどき指がもつれて失楽園行きになろうとするのも蝶楽しいな。

健ちゃんが草を刈ったる10そのどこに庭鋏が紛れ込んでいるのでせう 蝶人

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