Wednesday, May 23, 2007

川本三郎著「名作写真と歩く昭和の東京」を読む

降っても照っても第17回


昭和の名建築がどんどん姿を消しているなかで、著者は名カメラマンが遺した名場面をダシにしながら、昭和の懐かしい記憶を思い出の玉手箱の中から一つひとつ取り出してきてはいとおしむように語る。

新宿副都心に一変した淀橋浄水場も忘れがたいが、1969年1月19日の東大安田講堂前の写真、わけても同年10月21日の国際反戦デーの夜、東大全共闘の隊列の中にいた現マガジンハウスの編集者平沢豊氏が、新宿伊勢丹会館の前でシャッターを切ったブレブレの1枚が鋭くわが心を深くえぐる。

著者が語るように、30年前の若者は、己を否定するなかから新しい道を探そうとしたが、いまの若者は、己を肯定するなかから前進を模索しようとしているようにも見える。

さうして、いずれもおんなじ馬鹿者なのであらう。

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