Thursday, April 12, 2007

ある丹波の老人の話(18)

第三話 貧乏物語その5

続いて翌年の正月の大売出しも千客万来で、他の店からうらやまれ、「なかなかやるもんじゃ。さすがは春助の子じゃ。と人からも褒められるようになりました。父は道楽で身を誤まったんでししたが、商売は上手やったんです。

このように私の店がはやるのを見て、あれほど詰め掛けた借金取りもバッタリ来なくなりました。

差し押さえの口にはわたしはが直接行って話し合い、だいぶまけてはもらいましたがともかく皆済し、正月には封印の取れた畳の上でめでたく雑煮が祝えたんどした。

まだ借金は残っとりましたけど、誰も取立てを催促する者はなく、それどころかまだ大口三百円も残っている債権者から、「また入ったらいつでもつかっておくんなはれよ」と言われるほど、昨日の鬼も仏になって、急に融通も効きはじめたんでした。

今までは元値を切って売っていたもんですから、全然儲けにはなっとらへんのですが、とにかく商品がよく捌けて相当額の金が不自由なく融通がききだし、店の名前があちこちで話題になり、お得意先が増えたことは商人にとって絶対の強みでした。

問屋筋へも決して遅滞せず支払いを済ますことができたんで、信用は満点で先行きは明るく、まだ借金が残っていることも格別気にはなりまへんでした。

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