謎が解けた!
♪音楽千夜一夜 第17回
あの有名なバッハ・コレギウム・ジャパンの音楽監督で、チェンバロ・オルガン奏者でもある鈴木雅明氏は、高校三年の半ばまでは脳外科医を目指して猛勉強をしていたそうだ。
ところがそんな夏のある日、氏はたまたま作曲家の萩原秀彦氏のレクチャーを聞いたそうな。
萩原氏はバッハの平均律クラヴィーア曲集の第8番を解説して、「この曲に出てくる5度の跳躍、3度の下降、そして3度の上昇は、父とキリストと精霊の三位一体を表わす」と言ったそうだ。
その瞬間、鈴木氏は猛烈な感銘を受け、「やはり音楽はすごい。バッハはすごい!」と痛感し、脳外科医の夢はどこかへすっ飛んで晴れて音楽家になった、という。
この話を聞いてなにやら不可解な疑惑を抱いた私は、グールド、リヒテル、ロザリン・チュレック、シュナーベル、ニコラーエワ、グルダ、アファナシエフ、マーチン、シフ、アスペレンの計10名の演奏で、同曲のプレリュードとフーガを繰り返し、繰り返し聴いた。
そしてそのたびに「5度の跳躍、3度の下降、そして3度の上昇」は何度も何度も登場したのだが、不幸なことにいくら耳を澄ませても、不信心な私にはそれが「父とキリストと精霊の三位一体を表わす」ものとは聴こえなかった。
そして昨日、ついに私はその理由がわかった。
私は高校時代の世界史でニケーアの公会議(325年)について学んだとき、三位一体説を唱えた勝ち組のアタナシウス派よりも、三位一体を否定する負け組のアリウス派に共感を抱き、それがかの名曲迷鑑賞の大いなるさまたげになっていたのだった?!
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