音楽千夜一夜 第4回
最近ウエバーWeber, Carl Maria von (1786-1826)の歌劇「魔弾の射手」をクライバー親子とマタチッチが指揮したCDで立て続けに聴きました。
3人の中ではやはりエーリッヒ・クライバー&バイエルンオペラのものがもっとも優れた演奏だと私には思えたのですが、それはこの際どうでもいいことで。
この「魔弾の射手」はドイツ人による最初の国民オペラらしいのですが、確かにそれだけのことはあってドイツ帝国成立(1871年)をめざしてひたすら前へ前へと突き進んでいくドイツ人のロマンチシズムと強烈なエネルギーはまぶしいほどです。
全編どこでも斬ればゲルマンの血がほとばしり出るような生々しい音楽と言えるかもしれません。いうなれば新興帝国の精神の応援歌でげす。
よくWagnerの音楽とナチズムの親近性を指摘する人もいますが、その源泉はすでにウエバーの目もくらむようなドイツ魂の熱血音楽の内部から湧出していたのではないでやんしょうか。
メンデルスゾーン(1809-1847)とゲーテ(1749-1832)もほぼ同時代の人ですが、このウエバーほどの手放しの若さと過激さは持ち合わせていなかったような気がします。
アジアの片隅でゆっくりと黄昏てゆく少し疲れた老大国で、このウエバー選手のような元気で単細胞な音楽を聴くと、なぜか「やれやれ」というため息が出てきます。
ドイツ音楽のいちおうの完成者はやはりベートーベン(1770-1827)ということになるのでしょうが、昨日聴いた彼の感動的な第9交響曲にしても、ほんとうはその限りなき前向きさ加減にちょっと辟易させられるところがあります。
やれやれ、おらっちもジャパンもいつの間にか年取ってしもうたなあ。
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