Saturday, July 30, 2011

市川昆監督の「おとうと」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.135


1960年製作のこの映画は、黒白のコントラストを強調した世界初の「銀残し」という画像処理を施された映画ですが、その特色は本作よりはスピルバーグの「マイノリテイ・レポート」などでもっとよ強烈に生かされていましたが、この映画でもヒロインの岸恵子の陰影のあるくまどり、父親役の森雅之の深みのある重厚な表情にその効果を発揮しています。


原作は幸田文、脚色は水木洋子、そして監督が市川昆ですから、姉の岸も「おとうと」の川口浩も大船に乗せられたようなもの。父役の森と義母役の田中絹代の強烈な助演を受けて、薄命の少年の哀しい映像物語ができました。

不良でろくでなしの弟を若くしてガンで亡くなった川口が熱演しているが、その弟を「熱愛」する姉の岸もまけじと張り合う。ラストで臨終の弟が差し伸べた腕を抱けなかった姉が、つかの間の失神から甦って無意識にエプロンをつけながら病室に飛んで行くストップモーションにすべてのスタッフの情念が籠っているようです。

岸恵子がデパートで万引きしたと疑われて非人間的な取り調べをされるシーンや、半身不随の意地悪で孤独な義母役の田中絹代が、キリスト教信者仲間の岸田今日子とひそひそ陰微に密談を交わすシーンも忘れ難いものがあります。

ニッポン戦場、ニッポン洗浄、ニッポン沈没、ニッポン脱出 蝶人

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