♪音楽千夜一夜 第211夜
これまたソニーの叩き売り超廉価盤CDですが、珍しやクラウディオ・アバドがシカゴ響を指揮しています。最近のアバドは「知・情・意」が絶妙に融合された名演奏を聞かせてくれるようになりましたが、これはちと知が勝ち過ぎて、情と意に欠ける演奏で、そのかわりにチャイコフスキーの管弦楽の構造が清明に透けて見えてくるような不思議な聴後感が残ります。
カラヤンやロストロポーヴィッチその他の指揮者で1番や2番、3番を聴いても、作曲者がなにを言いたいのか全然分かりませんが、アバドだとなんとなく分かった気にさせてくれる。しかし4番5番6番では全然興奮しない、できないという、よくいえば都会的でクールなチャイコフスキー、悪く言えばカタルシス皆無のチャイコということかしらん。
ところが交響曲よりも聴き映えがするのは序曲1812年やスラブ行進曲で、天才の天下の駄曲が立派な演奏に変身するところが、さすがはインテリアバドです。
天啓の如く鮎閃きぬ 蝶人
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