Wednesday, July 27, 2011

清水宏監督の「風の中の子供」を見て


闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.132


これは懐かしい坪田譲治原作の映画だ。ご存知善太と三平の兄弟が主人公となって、日本軍が南京で中国人を大虐殺していた頃の貧しい地方の暮らしをいっけんのんびりと描く。

しかし彼らの父親は文書偽造の嫌疑をかけられて逮捕され、三平は母と善太から引き離されて親戚にあずけられるなど苦労を強いられるのである。

大人の世界も息苦しいが、子供の世界だって極度の緊張と暴力の予感に満ち満ちた尋常ならざる世界だ。そこをなんとかかんとか潜り抜けないと、人は一人前の人になれないのである。

その嫌疑がようやく晴れて父親と2人の息子が庭で相撲を取るハッピーエンディングを見るとなんだかほっとする。そしてまた子供軍団が歓声を上げて兄弟に駆け寄り、善太がライバルの悪たれ小僧をその仲間に入れてやると、もっとほっとするのであるが、その風の中の少年たちを待っていたのは、太平洋戦争の地獄だった。

ものみながはげしくにおう夏の夜 蝶人

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