Tuesday, November 13, 2007

♪スキップする少女

♪ある晴れた日に その16

高い空から秋の夕陽が落ちてくる図書館前の路上で、少女が突然スキップしはじめた。

左、左、そして右、右
小さな足が交互に弾む
ワンツー、ワンツー、
あどけなく歌いながら蝶が舞う

そのとき、さっと母親の手を解き放った少女は、
両手を軽やかにスイングしながらイサドラのように踊る、踊る、飛ぶ、跳ねる――
御成小学校の交差点をスキップしながら走りぬけ、ほら、もう佐藤病院の前で母親が来るのを待っている。

左、左、そして右、右
小さな足が交互に弾む
ワンツー、ワンツー、
あどけなく歌いながら蝶が舞う

ジーンズのスカートに赤と黄色の刺繍が紅葉のように散り、おかっぱがつむじ風にはらはら揺れて――

そしてあっという間に、少女は江ノ電の踏み切りの向こうに消えた。
母親と一緒に見えなくなった。

私は思う。
やがて、少女は気づくに違いない。いつのまにかスキップをどこか遠いところにおき忘れてしまったことを……
そしてある朝、大人になった少女はしみじみ振り返るだろう。
その夕べこそは、生涯で最も幸福ないっときであったことを……

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