Thursday, May 17, 2012

イサベル・コイシェ監督の「エレジー」を見て



闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.248


フィリップ・ロスの原作をイサベル・コイシェが2008年に映画化した老いらくの恋の物語です。

古希に達した大学教授の主人公ベン・キングズレーが、花も恥じらう女子学生ペネロペ・クルスを落として朝な夕なにもてあそぶのだが、そのうち世間でよくあるように立場が逆転して突然ぽいと捨てられてしまい、身も世もなく毎日毎晩よよと泣き崩れる。その失楽園オヤジを慰めるのがなんとデニス・ホッパーでこれが彼の遺作となりました。

ところが若い男に走ったペネロペ嬢がある夜突然70爺に電話してきて、やっぱあなたが忘れられないわなぞとほざいてまた撚りを戻すという与話情浮名横櫛なもうやってられません、見てられませんなお噺。私はベン・キングズレーも嫌いならペネロペ嬢のからだのどこにも魅力を感じられない不幸な男なので、まったく感情移入することなくみ終えた次第です。

気になるのは老爺が若娘を落とす手口です。この映画の爺は教え子が卒業してからパーテーィなどでくどくので、「この狒狒爺、賢いなあ」と思ったのですが、以前私と同じ学校で長く教師をしていた先輩の話では、毎年複数のうら若き乙女が、「先生あたいとホテルへ行こ行こ」と毎年毎年誘ってきたらしい。

けれども私の場合にはただの一回も、そーゆー電撃フリントゴーゴー作戦のような大胆不敵な楽しい肉団子提案なぞ皆無だったので、この話を小耳にはさんだときにはかの9.11よりもあの3.11よりも激烈なショックを受けたのでした。やれやれ。

思い屈したる時は黙っているより発語したほうが楽になるよ嗚呼 蝶人

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