♪音楽千夜一夜 第197夜
グルダはかつて三馬鹿ならぬウイーンピアノ界の三羽烏の一羽と呼ばれていたが、どうして3羽はカラスなのだろう? 他の二羽はデムスとパドラスコダであるが、私は昔は最後の烏を一等愛していて彼がオイストラフと入れたベートーヴェンのソナタなぞを愛聴していた。
いっぽうグルダの音楽世界はいまの指揮者でいうとアーノンクールかブーレーズのような訳の分からぬ暗黒物質があって長らく放置していたが、ここに収められたモザールの二四番目の協奏曲をマルケビッチ指揮リアス放響の援護の元で匍匐前進した演奏やベーム&ウイーンフィルの伴奏で流麗に弾き鳴らしたベートーヴェンの一番を聴いてみると、彼がいかにこれらの音楽を愛していたかが如実にうかがえて心が弾む。
またグルダ選手は、私の嫌いなショパンや私の好きなドビュッシーやラベルも演奏しているが、これらは到底サンソン・フランソワの酔っ払い演奏の足元にも及ばない糞真面目な代物である。
彼は私がもっと嫌いなジャズ、それも下手馬のジャズもどきをいつもレパートリーに入れて古典ナンバーと一緒のプログラムを組んでいた。このアンソロジーの最後もAT BIRDLANDというタイトルのジャズ演奏になっているが、例によって退屈極まりない演奏で、黒田なんとかという音楽評論家がグルダのジャズを絶賛する提灯記事を見かけるたびに、ひそかにこの阿呆めと呟いていた昔日を、所謂一つの遠い目玉で思い出したことだった。
くたばれポリーニよみがえれコルトーフランソワ 茫洋
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