Sunday, May 29, 2011

小澤征爾指揮「賢い女狐の物語」を視聴して


♪音楽千夜一夜 201

オケはサイトウキネン、松本市文化会館で2008年に収録されたビデオだが、小澤の指揮は相変わらず単調だ。

いつものように音色は透明であり、音譜の前後左右をまるで神経質な植木職人のように刈り込んであるが、いつものようにリズムが2拍子の尺取り虫の突貫小僧のようであるために、ヤナーチエックの音楽に必須の粘液質な遊びもためもメリハリもない。

ために3幕4幕のクライマックスになっても管弦の咆哮と抒情の絶美の歌がマッケラス&ウイーンのようには聴こえてこないのが残念というか当然の結果になってしまう。まあ所詮はその程度の音楽家なのであろう。

しかしなんという素晴らしいオペラをヤナーチエックは書いたことか。そこには人よりも深い獣の崇高な精神世界が昂然と歌われ、その穢れなき至高の境地に善導されるかのように人獣一致・善悪一致の極楽境が宇宙の彼方から奏されるのであり、このような別次元の音楽はかつてモーツアルトとワーグナーによってしか創造されなかった。

今を去る30年以上前に日生劇場で伊藤京子が若杉弘の指揮で歌った女狐の響きいまいずこ?

雨の月曜日は歌なんかを歌えない 茫洋

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