Tuesday, February 08, 2011

鎌倉国宝館で「肉筆浮世絵の美」展をみる


鎌倉ちょっと不思議な物語第239&茫洋物見遊山記第52

新春恒例の氏家浮世絵コレクションがことしも展示されています。氏家浮世絵コレクションというのは、多年にわたり肉筆浮世絵の蒐集につとめてきた氏家武雄氏と鎌倉市が協力して昭和四九年に鎌倉国宝館内に設置された財団法人です。

かつて数多くの肉筆浮世絵の優品が海外に流出しましたが、早くからその蒐集保存に努めてこられた氏の尽力のおかげで、こうしてまた葛飾北斎、歌川広重、勝川春章、月岡雪鼎などの名作およそ五〇点をつぶさに鑑賞する機会を得たことはなにものにも代えがたいよろこびでした。

そのなかで私の眼を射ぬいたのはやはり天才北斎の「酔余美人図」や「桜に鷲図」などの写実的なくせにどこか幻想的な作品です。その大胆な構成と華麗な色彩の調和、そしてどんな憂鬱も一撃の元に吹き飛ばしてしまうアポロのように明快な作風は、どこかピカソに似た健康さを連想させます。

左右二双にわたって描かれた「鶴鸛図屏風」では、大空を軽やかに飛翔するコウノトリの脚が朱色に描かれ、とかく混同されるツルとの生物的異同を正確に描き分けているところはさすがで、観察と写生の大家の面目が躍如としていました。

なお本展は2月13日まで開催中です。

無能無知無価値な子の尊さわれのみぞ知る 茫洋

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