Saturday, February 19, 2011

イェジ・アントチャク監督の「DESIRE FOR LOVE」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.95

ショパンを主人公にした映画の試写会があるというので拝見させていただきました。原題は「愛の欲望」というのですが、邦題では「ショパン愛と哀しみの旋律」となっていて、今年3月に銀座のシネスイッチで公開されるようです。

この「DESIRE FOR LOVE」というタイトルは、この映画の本質をかなり正しく言い表していて、映画はたしかにショパンの生涯を追う音楽映画ではあるのだけれど、それは表面だけのことであって、むしろショパンの愛を求めるフランスの閨秀作家ジョルジュ・サンドとその娘ソランジュの愛の相克がテーマになっていると考えられます。

サンドとその娘はショパンへの愛の欲望をむき出しにしていますが、肝心のショパンはそうでもない。はじめのうちは人妻の濃厚な色気に夢中になりますが、だんだん肺結核が進行していくせいもあって、生の焦点が性から音楽自身に変わっていく。そうであればあるほど、ソランジュなどは一途にイケメンショパンを求めるわけです。

いっぽう下手くそな絵描きのモーリスは、最愛の母親の愛を奪う男が憎くて憎くてたまらず、折あらば恋敵の命さえ奪ってやろうと考えている。ですから1847年、ショパン37歳の年のサンドとの決別は、サンドの純愛が子供たちの複合愛に敗北した結果であるとも言えましょう。

ポーランド映画界が総力を挙げて取り組んだだけのことはあって、ふんだんに鳴り渡るピアノの詩人の名曲や、恋するファミリーが同居したスペインのマヨルカ島やフランス中部のノアンのサンド邸などの現地ロケも登場して耳目を楽しませてくれますが、どういうわけかショパン最晩年のロンドン生活と女性関係についてまったく触れられていないのが残念でした。

久しぶりにスクリーンで映画を鑑賞したのですが、普段自宅の液晶テレビで見ているブルーレイレコーダーで録画した美麗な画質に比べると著しく見劣りします。これからは劇場映画も、デジタル高画質化が要求される時代になるのではないでしょうか。


 ビデオ捨てLD捨ててDⅤDも捨て同じ映画をBDで録る 茫洋

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