Sunday, February 13, 2011

イングマール・ベルイマン監督の「秋のソナタ」をみて

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.90


母と娘はどうしてこれほどまでに憎み合わなければならないのか、とつくづく思わされるベルイマンの1978年制作の本作品です。

国際的に著名な歌手を演じるのは大女優イングリッド・バーグマン、そして娘役はこれまたベルイマンの昔からのお気に入りのリヴ・ウルマン。新旧スウエーデン出身の偉大な女優が名匠ベルイマンのメガフォンでガチンコの演技対決を行った結果は、ウルマンの圧勝でした。

仕事にかまけ、自己中でウルマン扮する長女のみならず障碍を持つ妹の育児も放り出して歌手のキャリアとステージのスポットライトしか眼中になかった悪い母親役を、その生涯の最後に演じさせられたバーグマン。ウルマンの涙の熱演の前では完全な悪役で、気の毒というほかはありません。

しかし「カサブランカ」ではあれほどの美貌に輝いていた顔が、こうも高慢頑固なおばあさんに変容したとは、ベルイマンも非妥協的で残酷な映画を撮ったものです。この人の演出では、演技が演劇や映画の枠をはみ出して、裸形の人間同士のぎりぎりのつばぜり合い、せめぎ合いに転化する瞬間があるように思うのですが、それがベルイマンの狙いなのか、それとも天与の余慶なのかは、いつもよく分からないのです。


スギタニルリシジミのスギタニ氏とはいかなるひとならむ 茫洋

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