♪音楽千夜一夜 第139夜
バルビローリといえば亡くなった三浦淳史という北国の音楽評論家を思い出します。こよなく英国音楽を愛した彼は、私にバルビローリやビーチャム卿が指揮するディーリアスやエルガーの音楽、そしてデニスブレインのホルンやジャクリーヌ・デユプレのチエロ、シュテファン・コワセヴィッチのピアノの素晴らしさを教えてくれました。
相思相愛の仲であったデユプレとコワセヴィッチの間に乱暴に割って入ることによってこの不世出の閨秀チエリストの人生をめちゃくちゃにしたダニエル・バレンボイムを生涯にわたって許さなかった三浦氏は、デユプレとコワセヴィッチの唯一の共演であるベートーヴェンのチエロソナタをこよなく愛したのでした。
さて今回EMIから発売された10枚組の超廉価版CDセットには、サー・ジョンが手兵のハレ管弦楽団を指揮したディーリアスの「夏の庭」やシベリウスの「フィンランディア」、シンフォニア・オブ・ロンドンを率いたヴォーン・ウイリアムスの「グリーンスリーヴズの主題による幻想曲」、ウイーンフィルと入れたブラームスの第3交響曲などがバランスよくレイアウトされていますが、久しぶりに聞いたベルリオーズの「夏の夜」におけるジャネット・ベーカーとの声涙ともに下る名演奏に魂を奪われてしまいました。
抒情的な旋律を歌いに歌って聴く者の琴線にとことん迫る斯界の第一人者とは、かのトスカニーニではなくなんとジョン・バルビローリその人だったのです。
♪歌え、歌え、心から歌えとサー・ジョンが叫ぶ 茫洋
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