音楽千夜一夜 第142夜
お馴染み独ドキュメント盤によるたった1000円のドビュツシイ・コレクションですが、その内容はモントー、マルケビッチ、アンセルメ指揮による管弦楽の名品「海」、「牧神の午後への前奏曲」やホロビッツ。コルトー、ギーゼキング、ツービンシュタイン独奏による「練習曲」、カルヴェカルテットによる「弦楽四重奏曲」、歌曲まで選曲・演奏ともなかなか充実した格好のセレクト集です。
とくに注目に値するのは、ドビュツシイのエキスパートと称されたデジレ・エミール・アンゲルブレヒト指揮によるオペラ「聖セバスチヤンの殉教」の名演奏が収録されていること。
このCDはかつて仏ディスク・モンターニュからほそぼそと出されていましたが80年代から廃盤になっていたマニア垂涎のお値打ち品で、「ぺリアスとメリザンド」でオペラ界に衝撃を与えたドビュツシイの、アラン・ポー原作による、もうひとつの傑作にこころゆくまで耳を傾けることができます。
ドイツの単純明快な音楽と比較すると、イギリス、フランスの音楽はいったいなにをいいたいのかよくわかりませんが、最近はまさしくその点が素晴らしいのだと得心がいくようになりました。つまり音楽には最終的な解決はない以上、彼らもなにをどう表現していいのかよくわからなかったのです。
明るい光に包まれたラベルの平原から、深い霧に閉ざされたドビュツシイの森に入るとアンリ・ルソーの花や樹木や蛇や女やライオンに出会う楽しみがあなたを待っていることでしょう。
♪入梅の朝、一匹の大蛇が道路を横断していった。茫洋
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