Thursday, June 10, 2010

写大ギャラリーで「写真家と静物との対話」展を見る

茫洋物見遊山記第31回

すでに6月の6日に終わってしまいましたが、東京工芸大学・中野キャンパスで開催されていた「写真家と静物との対話」展を足早に見物していたのでした。
 
写真と私の初めての出会いは「日光写真」でした。いつ差してくるかわからない光線をひたすら待ち続けていると、深い霧がようやく憂鬱なヴェールを開いて転写装置を載せた小さな方形のフレームの上に幽かな陽の光が落ちると、印画紙の上に影とも形ともつかない図像がぼんやりと姿を現します。露台の上でうずくまって、裏日本地方特有のうら悲しい曇天の空を見上げていた少年は、いったいなにを考えていたのでしょうか。

長じた後、その少年はようやく手に入れたデジタルカメラで10年近くおのれの風貌と頭上の空を撮り続け、それらの、微細な差異があるような、ないような画像をときおりパソコンのモニターで自動再生して呆然と眺めているようですが、そのとき彼の脳裏には、いったいいかなる想念が湧き起っているのでしょうか。


写大ギャラリーの会場に並んだW.H.フォックス、エドワード・ウエストン、イモジン・カニングハム、ジャン・クルーバーなどの主として静物を対象としたもの寂びた写真は、私のそんな遠い日の記憶を呼び覚ましてくれたようです。


腹黒き王沢蜂を一刺しし己は死にたり鳩蜂マーヤ 茫洋

ドン・ジョヴァンニの地獄落ち思い出したり小鳩刺し違え 茫洋

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