闇にまぎれて bowyow cine-archives vol.13
オーソン・ウエルズがラジオ番組にして全米をあっと驚かせた英国の作家H.G.ウエルズの原作をスピルバーグが映画化しました。
雷鳴が轟きわたる黒い空から突然襲来してくる凶悪な宇宙人たち。思いもかけず彼らは天体からではなく、地球の足元から次々に湧き出てきます。知能とハイテク技術に長けた彼らは、地球生誕の大昔からわたしたち人類の下部構造に潜んでいたのです。
ですから宇宙人というのは、わたしたち自身に内在している闇の部分、他者への無関心と敵意と殺意そのものといってもよいでしょう。
だから画面は終始暗く陰鬱そのものです。扮する家族もお互いにとげとげしく反発しあい、愛情のかけらもないバラバラの状態です。
スクリーンにうごめく暗い人物の不吉な影。そこへ襲いかかる武装した宇宙人軍団。最強を誇った地球防衛軍はあっというまにほぼ全滅状態となり、わずかにオオサカの善戦がボストンにまで伝わってくるのみ。地球最後の日は目前に迫りました。
この映画では、スピルバーグが、あるいはわたしたち自身が持っている果てしもなく絶望的で退嬰的な悪魔の世界が延々と描写され、万策尽きたと誰もが思わされたその瞬間にかすかな曙光が差しこみ、お約束といえばお約束の奇跡の逆転劇がラストで訪れる。そのドラマの道行がいかにもスピルバーグであります。
われらが地獄面よりぬっと立ち上がる悪鬼どもを倒すのは誰 茫洋
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