茫洋広告戯評第4回
昨日と同じ新宿西口広場をどこかでフォーク集会でもやっていないかなとねぼけ眼で探していたら、台湾のパソコンメーカーの「パソコンは5万円で買う時代」という広告が目に入りました。やたらグリコにおまけをつけて10万、20万で売り出すのではなくて、メールやネットなど必要最小限の機能だけでグリコを安く買いましょう、という提案です。
アスース、エイサーなどがはずみをつけたこの格安ネットブックは米国のHPやデル、日本勢も追随するところとなり、ビックカメラなどの家電量販店のパソコン売り場の最前列に並んでいますが、こういう新参者の乱入を許したのはパソコンメーカーと米マイクロソフト社の多機能高付加価値製品を高価格で販売しようとする醜い商魂でしょう。
車も洋服も低価格中品質を求める消費者のニーズに懸命に対応しようとしているのに、彼らは「早い、安い、うまい」ならぬ、「遅い、高い、まずい」製品をあくまでも売りつけようとしていました。とりわけひどいのは米マイクロソフト社の現行OS、ビスタです。不要不急の機能をてんこもりにつけて、運用速度をめちゃめちゃに遅くしてしまい、それを消費者に対するサービスと考えているこの世界的大企業に対する反発が今回の格安ネットブックブームの根源に隠されているのではないでしょうか。
彼らはこの失敗を反省して新しい改訂版ソフトを年内に発売するそうですが、「大男総身に知恵が回りかね」とはよく言ったもの。ソニーのプレステが任天堂に苦杯をなめたように、とかく巨大化した企業は消費者のちょっとした心根をくみ取ることに失敗して逆、その存在理由をいつのまにか掘り崩してしまうことを深く自戒せねばなりません。
実際に5万円パソコンを使ってみるとこれが意外に使いづらく、これならもう少し割高でも多機能なノートが欲しいと思うはずで、現に市場はその方向に動きつつありますが、ともかく一寸先は真っ暗闇のビジネス戦線であります。
少女なれどすでに大人の憂いあり母を見上げる愛子さん 茫洋
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