照る日曇る日第221回
前者は少年の継母への淡い初恋を軸にした偽ビルダングスロマンであるが、どこがイタリアを代表する女流作家らしいのか理解に苦しむ。こうしたテーマでは中勘助などのわが国の少年文学のほうに1日の長がある。私はそぞろ下村湖人や山本有三なぞをまた読み返してみたくなった。
2作のうち取るとすれば、まだ後者か。これはローマからアメリカのプリンストンに脱出した作家を中心にその係累たちがお互いに取り交わす書簡から構成される家族の物語で、翻訳を亡くなった須賀敦子が担当していてそれなりに読ませるものがある。
池澤夏樹の個人編集による河出書房新社の世界文学全集は、これまでは比較的駄作が少なかったが、本巻はその数少ない例外といえよう。
♪こんな小説のどこがおもろいんじゃあと叫びて屑籠めがけて投げつける 茫洋
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