Thursday, January 15, 2009

佐藤賢一著・小説フランス革命「革命のライオン」を読む

照る日曇る日第219回

そもそもの始まりは王国の財政難だった。貴族が課税に抵抗したためにフランスの国政が混乱し、1788年、貴族の傲慢な居直りを背景に高等法院と政府(財務長官ネッケル)は決定的に対立した。

翌年の8月8日、国民の声に押されて魔がさしたルイ16世は、よせばいいのに何を血迷ったのか全国3部会の招集を発令する。
ここに全国から集まった平民、僧侶、貴族の政治的対立がフランスの国民意識の覚醒をうながし、それが同89年7月14日のバスティーユ要塞攻撃に引火していくのである。

このシリーズの第1巻は、革命前夜の全国3部会の動静をつぶさに描いて興味深い。そこでは王、第1身分の聖職者や第2身分の貴族たちから蔑視されながら徐々に己の権利と権力にめざめていく第3身分の平民たちの姿が、プロバンスの貴族でありながら第3身分代表として全国3部会、後の国民議会の議員となったミラボー伯爵を中心に生き生きと描かれている。
 
「革命の獅子」と呼ばれたミラボーの豪傑ぶりと、その清濁併せ呑む政治的言動に魅了されながら、次第に力を蓄えていくアラスの弁護士で後の独裁者ロベスピエールの初々しい姿、「第3身分とは何か」を書いた僧侶のシェイエス、アメリカ独立戦争にボランティアとして従軍したラ・ファイエット将軍などの実像も新鮮そのもの。あの悪筆家の塩野七生ほどではないが、文章の一部に生硬な表現がみられるが、そんなことより今後の展開が大いに期待される。



♪どんな革命にも大中小の獅子がいた吼えよライオン  茫洋

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