ふあっちょん幻論第6回
現在の小売業の市場規模はおよそ133兆円、そのうちファッションの市場はテキスタイル、アパレル、身の回り品を含めて約11兆円である。
さらにその内容を見ると婦人6兆、紳士3兆、子供ベビーなど1兆円、という大雑把な比率であるから、やはり主力はなんといってもレディスということになる。それもマスコミなどで話題になるのは外資系の婦人服や雑貨、時計、アクセサリーなどに限られ、国産の紳士服などは長らく氷河期の低迷を続けてきた。
事実メンズ市場は15年連続の前年割れに喘ぎ、中長期的にはメンズ市況の展望は暗い。
国を挙げてのクールビズ、ウオームビズ運動は多少の需要増に繋がったものの、これから団塊世代の一斉退場がスーツの売り上げを大きく奪うだろう。
メンズ専門店のアオキは店名をメンズプラザ・アオキからAOKIに変更して婦人子供服を強化。家族連れの取り込みを図っているし、青山商事なども将来はメンズ比率を5割以下に引き下げようと計画している。
しかし最近の伊勢丹メンズ新館のリニューアルはメンズウエアの昨対300%増につながり、婦人服が不調のアパレル大手も樫山の紳士服売上が久しぶりに昨対増に転じるなど一定程度の回復を見つつある。レディスでヒットした美脚&脚長パンツなどのメンズ版投入がそれなりに実った成果であろう。
もうひとつの要因は、シルエットの根本的な変化である。婦人服では80年代に全盛であった肩パッドを基軸にしたゆったりシルエットが流行遅れとなり、90年代前半にはボディにぴったりフィットするスリムなシルエットの時代がとっくの昔に訪れていたのだが、メンズの世界ではそのシルエットの導入がおよそ10年の長きに渡って遅れ、(私はこれを「失われた阿呆馬鹿メンズの10年」と名づけている)遅れた代わりにナロウ&フィット革命の進行がレディスよりも激烈で、その余波はいまなおヤングからアダルトのシルエット転換に及んでいる。
80年代後半の偉大なるジョルジョ・アルマーニのタック入りのゆったりシルエットは、2000年代に入ってはじめて世界の大衆から否定され、と同時にメンズデザイン業界は大いなる構造変革の時期に突入したのだが、それはわが国ではかの悪名高きライオン丸内閣の成立と期を一にしていたのである。
日本アパレル産業協議会によると、現在の成人男性の保有スーツは平均10.9着で、うち4.2着が不要になったと回答しているが、実はこれこそが女性の肩パッド入りドレスと同様のアウト・オブ・ファッション(シルエット変化による時代遅れ)物で、この偽不用品を強引に電機業界にあてはめると薄型テレビに対するブラウン管テレビに該当するだろう。
従ってもしアパレル業界がこのメンズ不況期を絶好の新規需要転換期ととらえなおし、新しいデザイン企画による新しいマーチャンダイジングとマーケティング戦略を発動すれば、禍転じて福=服となる絶好のチャンスかもしれないのである。
♪千両、万両、億両 子等のため母上は金のなる木を植え給えり
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