♪ある晴れた日に その20
おみくじは引かずに帰る鎌倉宮
なにごとのおわしますかはしらねども今年もなんとか生きていくよ
去年今年生きてしあればそれでよし
初日の出今年も市中に山居せむ
小便の泡で描きたる髑髏かな
父祖伝来暗黒面に光なし
粛々と死地に赴く銀の船
元旦やわれよりもまず家族かな
在庫無く迎える朝に日が昇る
冬の朝わが欲望の遠ざかる
どすこい6万6千ボルト君の傍にはあまり近寄りたくない
神田なるチャールズ・イー・タトル商会にあこがれし日もあり
こなくそと振り下ろしたる刀かな -偲龍馬
亡き父が釈迦の寝姿といいし山けふも静かに横たわるかな
真っ青に晴れ上がりたる冬空にわが初めて獣になりし日を思う
太刀洗の桜並木の散歩道犬の糞に咲くイヌフグリの花
犬どもの糞に隠れて咲いていたよ青く小さなイヌフグリの花
千両、万両、億両 子等のため母上は金のなる木を植え給えり
神実在森羅万象すべて不可知なり
大寒やわが欲望の小ささよ
新橋のポルノ雑誌屋とキムラヤクラシック売り場解けて流れて霞となりけり
ひよめじろやまがらおながしじゅうからうぐいすみんなこいこいわがやのときわさんざしへ
正岡の子規が作りし月並みの句ほど好ましきものはない
果樹園で柚子を拾いき花いちもんめ
果樹園で彼女の屍体は見ざリけり
我もまた穴で春待つ土竜かな
一月も半ばになりて仕事来ず
今晩はどんな夢見るかなと笑いつつ疾く床に就くうちの善ちゃん
正月なし無用の用に精進する息子
わが息子寝る間惜しみて描きたる愛犬ムクの絵売れ残りたり
神仏に祈りし甲斐やムク売れる
はにかんで笑った顔がぶれていた月本氏死す弱冠四十七
ただ一人泣いていたりし通夜の客
莞爾たり無私たり自娯たりし月本氏死す享年四十七
我が滅びのあと残されし子らのために何が出来るかを考えよ
教壇のチョークの粉にまみれつつ白けた魂を熱く燃すべし –最終講義
あの世からの刺客のごとく手裏剣を生徒の胸にシュルシュルと刺す
わが実存かけて発する言の葉よ若き胸に落ち善き実を結べ
子規漱石もし今の世にありとせばいかに生きるやいかに死ぬるや
音程が悪いとわれが罵りしその流行歌手は左耳聴こえず –許せ鮎女
昼は尨犬のごとく街頭を彷徨い夜は鮪のごとく眠れり
闘争を紛争、敗戦を終戦と言い換える人が嫌いだ
道野辺の木の葉を拾いて河に捨つ愚かな人と蔑むなかれ
誕生日に息子が持て来しフリージア母の心に長く馨るよ
空に鳥万象すべて不可知なり
一月も終わりになりて仕事来ず
善きこと日々に滅びて悪しきこといや勝りゆく平成二〇年
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