♪バガテルop37
最近岩波書店の広辞苑10年ぶりに改訂され、新聞をメインにした第6版新発売キャンペーンが展開されているようだ。
ビジュアルに手塚治や桑田投手など意表をつくキャラクターを起用しているのはいいとしても、キャンペーンテーマのコピーが「ことばには意味がある」というのは、はてこれにはいったいどういう意味があるのか?と頭をかしげてしまう。
もしも言葉に意味がなければ、出目金に目玉はなく狸に金玉もなくなる道理だ。余りにも当たり前すぎる。意味のない言葉もあるだろうと嫌味のひとつもいいたくなるほど平板なコピーにかえって驚いてしまう。
これは昨日の燦鳥さんと違っていわゆるひとつの広告の言葉ではない。宣伝部のコピーライターではなく総務のおじさんがコクヨの便箋にメモした単なる説明である。私は流行に敏感に対応できる他の版元よりも、そんな時代遅れの岩波書店と改訳しない岩波文庫が大好きだが、美辞麗句以前の名辞を堂々と並べて見せる老舗の顧客無視の大胆さにはわれらもはや脱帽するほかはない。
余談ながら、石山茂利夫著「国語辞書事件」によればたしか「広辞苑」の元本は岩波茂雄が博文館から超安値で版権を買った「辞苑」であり、その「辞苑」は三省堂の金沢庄三郎の「大辞林」などの完璧なパクリであり、広辞苑の編者の新村出が同辞典の出版に際していかなる創造的な編集作業を行なわずにそのまま洛陽に押し出したことは彼の息子の新村猛がつとに告白しているところである。
だからということもないが、その後の「広辞苑」が大野晋などによって全面的に改稿されたとはいえ、私はあまりこの“日本を代表する大辞典”にはいっこうに信をおかず、「大辞林」や小学館の「国語大辞典」や北原保雄の「明鏡」、さらにはあらゆる日本語辞書の親本である大槻文彦の「大言海」を愛用している。
ちなみに「大言海」では昨日の「すっくと」の原意は「すくすくと」であり、直ク立チ上ガル状ナドニイフ語、と書かれています。
偲竜馬
こなくそと振り下ろしたる刀かな 亡羊
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