Monday, January 21, 2008

ある丹波の女性の物語 第42回 旅行 

遥かな昔、遠い所で第64回

 翌32年も問屋の九州旅行に、私達は再び参加した。

2月は一番ヒマな時期なので、父達も心よく留守を引き受けてくれた。別府、阿蘇を経て、長崎から雲仙、三角港から熊本へと1週間の旅であった。阿蘇山上は一面の雪で、あのこおりつくような寒さは忘れられない。熊本でも積雪がある寒い冬であった。

 4月の末には倉敷の夫の実家に法事があり、兄弟姉妹、夫婦で全員集まれと言う事で、私達も店には応援の人を頼み、これにも参加した。私は倉敷へは初めての訪問であった。

鷲羽山の旅館で宴会があり、甥のバィオリンでダンスも始まった。和やかな楽しい集いであった。「春の海ひねもすのたりのたりかな」そのままに、瀬戸内の波はおだやかであった。そのベタ波を目のあたりに眺め、新鮮な魚に舌鼔をうった。夫も心からくつろぎ、みちたりたようであった。兄弟姉妹って、なんていいもんだろうと私も心から思った。

 その年の5月、高熱が出る風邪が大流行した。店もしめ、学校も休みになった。我が家も全員発熱。互い違いに、1週間程休んでおさまったのであるが、夫だけはいつまでもすっきりしなかった。





散りばめる 星のごとくに 若草の
 野辺に咲きたる いぬふぐりの花 愛子

この春の 最後の桜に 会いたくて
 上野の坂を のぼり行くなり 愛子

あらし去り 葉桜となる 藤山を
 惜しみつつ眺む 街の広場に 愛子

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