Tuesday, January 22, 2008

ある丹波の女性の物語 第43回 夫の入院

遥かな昔、遠い所で第65回


 父が念のためにと、夫を京大病院の結核研究所へ連れて行った。開放性ではないが、肺炎と結核におかされているので、要入院との事で、直ちに綾部の郡是病院の結核病棟に入院した。

私はすでに覚悟はしていたけれども、入院準備はすべて終え、夫を1人ベッドにおいて帰ろうとした時、泣くまいと思うのに、涙があふれ出るのを止める事が出来なかった。しかし夫は、優等生と言われる程おとなしく闘病してくれたので、33年秋には無事退院する事が出来た。

 住み込みの女の子もよく慣れてくれていたし、父は夫の留守の間は手伝ってやると、がんばってくれた。私も皆が起きるまでに毎朝病院を訪ね、帰ってから店を開ける事にして、懸命に働いた。

 父も入院中の夫を聖書を持参してはげまし、他の患者さんにも伝道した。

 夫の退院祝に、鎌倉の兄からテレビを贈りたいとの申し出があったが、長男はすでに中学1年、次男も1年おいて中学生になるので、相談の上、毎日のお弁当作りに重宝なものをと、まだ田舎では珍しい電気冷蔵庫を、秋葉原から送ってもらった。
 子供達は3人揃って人が羨む程成績がよくて、全く心配がなく、その点ではとても恵まれていたと思っている。


浄瑠璃寺に このましと見し 十二ひとえ
 今坪庭に 花さかりなり 愛子

うす暗き 浄瑠璃寺の かたすみに
 ひそと咲きたる じゅうにひとえ 愛子

春あらし 過ぎてかた木の 一せいに
 きほい立つごと 芽ふきいでたり 愛子

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