Sunday, August 05, 2007

音楽鑑賞メディアは進化したのか?

♪音楽千夜一夜第24回

世間ではCDが売れなくなり、その代わりにi-tuneなどネットで音楽ソフトを買い、それをi-podなどで聴くというスタイルが主流になったそうでまことに慶賀に耐えない。

しかしmp3などの圧縮法を経由した音楽の音質はかなりひどいもので、私にはまだ昔のウークマンのほうが良い音であったように聞こえる。いまどきの若い人たちは元のソースの情報がかなり薄められた状態の音楽を、なにも弁別できずによろこんで耳にしているのではないだろうか?

げんに私は先日ロンドンで始まった07年PROMSのライブ録音を連日英国BBCのRADIO3で愛聴しているが、ヤマハの三万円のスピーカーを通して聴いてもこれは到底音楽といえるような代物ではない。

たとえば、リヒテルが弾くバッハの「平均律」を聴いてみよう。すると明らかにCDよりはカセット、カセットよりはLPで聴く同一音源の演奏のほうが、音楽的により豊富な情報と情念に満たされているように思える。
そしてもしかすると、そのLPよりも最高級セットで鑑賞するSPレコードのほうがさらに優れた音質かもしれない。


「昔のほうが良かった」というのはかつては年寄りの世迷言であったが、今では年寄り以外の人々もひそかにそう考えており、クラシック音楽の再生音についてもその例外ではないのではなかろうか?

そうしてみると、世の中も、人間も、退化こそすれ、進歩などはないとさえ思えてくる。

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