Thursday, August 16, 2007

ある丹波の老人の話(38)

第6話弟の更正 第6回

お互いに心の奥底まで打ち明けて兄弟の溝はすっかり取れました。

私たちは、弟が京都へ奉公に行ったときのことなどを思い出して、神の前に幼子となり、兄弟力を合わせて一仕事やろうと誓い合ったんでした。

そして弟は、私の希望を容れて酒も煙草も断って更生することを誓ったんでした。

薄志弱行、放蕩無頼の弟も永久にこの誓いを破らず、深く私徳とし、私を尊敬して私との共同事業に粉骨砕身し、持ち前の商売上手と過去の経験を生かしてよく私を助け、守りたててくれました。

 昭和27年の12月、私の家に弟がやって来たとき、私は鯛尽くめのご馳走をつくり、絶対買ったことのない上等の酒を買い求め、私が手ずから温めて、

「よく辛抱してくれた。今日はひとつゆっくり飲んでいってくれ」

と弟に勧めると、弟は、

「兄さん、私はこんなにうまい酒を飲んだことはない」

といって喜びましたが、血圧が高いからといって皆までは飲みませんでした。

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