Wednesday, August 29, 2007

ある丹波の老人の話(47)

第8話 思い出話2

米国からの帰路、私はシアトルから加賀丸という大きな船で北回りで帰る途中、猛烈な防風に遭いました。

どの船室にも水が浸入して乗客一同生きた心地もなく、食事どころの騒ぎではありまへん。

けれども私はこのときひたすらに神に祈って動じなかったせいか、丹波の山奥に生まれて船に慣れず体もあまり丈夫ではないのに、ただ一人平気で食事も常と同じように摂ることができたんでした。

はしなくも私は、ガリラヤの海の難船でただ一人安らかに眠るキリストに対して多くの弟子たちが救いを求めたときに、「ああ、信仰薄きものよ」と哀れみ、たちどころに波風を鎮め給いし事跡を思い起こしました。

それとこれとを比べることも大それた話ではありますが、やはり私が神を信じたから、あれだけ祈ったからこそ、弱い私があれほどのしたたかさを示すことができたんだ。と、思わずにはおれませんでした。

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