Wednesday, June 08, 2011

サイモン・ラトルの「EMIベートーヴェン選集9枚組」を聴いて


♪音楽千夜一夜 204

得体の知れないリバプール野郎のラトルがどうしてアバドの後を継いでベルリンフィルのシェフの座を継ぐことが出来たのかはよく分からない。本人すらよく分からない五里霧中の演奏を延々と続ける中で、ようやくその霧にいくばくかの晴れ間が垣間見えた録音、それがこの9枚のベートーヴェンと言えるだろう。

ここにはウイーンフィルと入れた交響曲全集を中心に、ラルス・ボクトという人の独奏で古巣のバーミンガムのオケと入れたピアノ協奏曲、ベルリンフィルと組んだ歌劇フィデリオ全曲などが入っていて、どういうわけか運命とハ長調協奏曲は同じメンバーによる別の2つの録音が入っていたが、幸いなことに、その2つのボーナス演奏がいちばん楽しめた。

私はベートーヴェンの交響曲では8番と4番、ピアノ協奏曲では1番と2番が好きで、あとは全部どぶに捨てても構わないのだが、ここに収められた演奏はいずれも「嫌なところのまったくない演奏」で、これがわずか1枚325円で聴けたよろこびを書き留めておかずにはいられない。

特になんの固定観念も持たずに耳にしたピアノ協奏曲第1番は、同じ日にBBCのネットラジオで聴いた内田光子とコリン・デイビス、BBC響のライブの、無機的で人工的な生硬さに比べて、夢幻的ともいくべき柔らかな飛翔を見せているのに一驚。いやあ音楽ってほんとに不可思議ですねえ、と思わずにはいられなかった。

しかし期待していた内田とデービスで、あれほど無味乾燥な駄演を見せつけられるとは、世も末だな。実際末なんだけど、音楽だけでもそれを上手に救ってくれなきゃ。

風呂に入りながらそのまま眠る極楽往生 茫洋

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