Monday, June 06, 2011

フルトヴェングラーの「THE GREAT EMI RECORDINGS」を聴いて


♪音楽千夜一夜 203

昔の指揮者の古い録音を聴いていると、いまどきの若手や中堅の音楽家がいかにつまらない低級な演奏に血道をあげているのがよく分かります。文学や映画もそうですが、古典的名作の凄さと素晴らしさを知らないで、阿呆な創作を夜郎事大に大展開している「期待の新人たち」のおゲイジュツごっこに付き合っているほどこちとらは暇でもないし、根気と親切も持ち合わせていないのです。

それでというわけでもないのですが、これは最近EMIから発売されたフルベンの21枚組の廉価盤で、何度も再発されたベートーヴェンやブラームスの交響曲全集やリヒアルト・シュトラウス、チャイコフスキーの悲愴、モザールの40番、ベトの歌劇フィデリオ、ワーグナーのトリスタンとイゾルデなどマエストロの代表作が要領よく網羅された珠玉のアンソロジーです。

今回聴いていまさらながらに感動を新たにしたのは、フィデリオとトリスタンとイゾルデで、既に所有している同じ録音と比べるとリマスターされたせいなのか音色がことのはかあざやかに甦り、(それはベートーヴェンの交響曲全集も同様)、やはりこの2つのオペラ、楽劇の演奏記録としては一、二を争う至高の境地に達しているなあと痛感させられた次第です。

しかしせっかくこういう名演に接した同じ耳で、これからまたしても幾多の凡演、駄演と付き合っていかねばならんと思うだに嫌気がさす今日この頃であります。

山笑う岩波文庫を読まぬ莫迦 茫洋

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