Wednesday, June 01, 2011

ワレリー・ゲルギエフ指揮「トロイアの人々」を視聴して

♪音楽千夜一夜 第202夜

2009年11月にスペインのバレンシア州立管弦楽団と合唱団を率いて勢力絶倫のワレリー・ゲルギエフが振ったライブビデオです。
ベルリオーズがウエルギリウスの原作にインスパイアーされて作曲したこのオペラは、演奏時間が4時間に垂んとする全5幕の大作ですが、書きも書いたり、振るも振ったり、弾くも弾いたり、聴くも聴いたりの労作には違いありません。

お話のスケールも巨大です。例のトロイの木馬の陰謀によってギリシア軍に敗れたトロイアの勇将アエネイスはイタリアの地で再興をはかろうとしてカルタゴに立ち寄るのですが、ここで女王ディドとの恋に落ちた我らが主人公は、オリンポスの神々の予言を実行すべきか、はたまた灼熱のアフリカの恋に身を焦がすべきか迷いに迷い、ついに色恋を断ち切って出発してしまいます。

世紀の恋に破れた女王は、捨てた男を恨みに恨みつつ自刃するのですが、彼女の遺言どおりにハンニバルは敵国ローマを敗走させ、江戸の敵を長崎で討つことにあいなるのでしたあ。

という聞くも涙語るも涙、波乱万丈の一大ラブスペクタクルをこのロシアの指揮者はなんとよどみなく、疲れもしらず、はじめは処女の如く、終わりは脱兎のように走破しおおせることでしょう! ヒロインのダニエラ・バルセロナ、ヒーローのランス・ライアンの熱演ともどもまことに現代のマエストロの鑑とも称すべき見事な演奏でした。

注目に値するのは全体をスターウオーズ風のスペースファンタジーとして舞台を再構成したカルルス・パトリッサによる演出で、はじめは違和感があったのですが、ベルリオーズの折衷的で冗長な音楽をなんとかまぎらわせて長丁場を乗り切るために大きな役割を果たしています。


君の言うことを信じるべきか否かその大きな耳袋を見ながら考えているわたし 茫洋

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