bowyow megalomania theater vol.1
気がついた時は、またしても夜でした。すごいほどの冷たい光を放つ鎌のような月は、初冬の夜空を鋭く切り裂き続けていました。
そしてお月さまの真ん中には、なぜか目の中のごみのように赤い雲が染みついていました。
僕は夜の寒気に思わず身震いしながら、よろよろと立ち上がりました。
藤沢西武の無印良品でお母さんが買ってくれた紺のウールジャージーは、あちこち焼け焦げてズボンにも2カ所穴があいていましたが、身体のどこにも銃弾の跡はありませんでした。
僕はかすり傷ひとつ負わずに奇跡的に助かったのです。
まだ余燼をくすぶらせながら無惨に焼けただれた不思議なお家の方へと二、三歩近づいた僕は、あっ、と叫んで立ち止まりました。足元に誰かの死骸があったのです。星空に向かっていまにも口笛を吹きそうに唇をとんがらせたまま目をつぶっているひとはるちゃんの黒焦げの死体が……
そうかそれでも生きていくのがひとのみちなのか 茫洋
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