Wednesday, January 05, 2011

マイケル・マン監督の「マイアミ・バイス」を見て

闇にまぎれてbowyow cine-archives vol.68

2006年に製作された特捜刑事マイアミ・バイスの映画版である。

冒頭から画面はダークで誰が何をしているのやらさっぱりわからない。ジョン・マーフィーの音楽も輪をかけて暗い。犯罪都市マイアミの悪徳を描くB級映画だからそれはそれでいいのだろうが、ギャング、ドラッグ、武器、密輸、秘密捜査と話が揃って、糞ダメに名花コン・リーと主人公コリンファレルの間に敵味方を超えた運命の恋が芽生えてもまったくも救いがない。こんなあほくさいドラマを撮影・製作していても創造のよろこびなんて全然なかっただろう。

監督のマイケル・マンの経歴を調べてみたら、あのクーパー原作の「モヒカン族の最期」を映画化した「ザ・ラスト・オブ・モヒカン」の監督であった。これで私の中では1955年製作の「侍ニッポン」と並ぶ心も冷えるお先真っ暗映画3本立てが完成したことになる。いずれをとっても夢も希望もない世界的なご時世にぴったりの映画であろう。

ゆいいつはきだめの鶴的な存在感を示しているのがコン・リーだが、あの1987年の「紅いコーリャン」から20数年、この女も幾星霜を経て今頃はどんな想いで暮らしているのだろう。映画のラストの暗い海に消える百合のような痩せた顔、思いつめたたような翳のある瞳を見ていると、こちとらまでがやるせない気分に襲われるのである。

生も暗く死もまた暗いそんな眼をしてこっちを見るなコン・リー 茫洋

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