茫洋物見遊山記第14回
横須賀は旧帝国海軍ゆかりの軍港で、港の公園の一郭には大戦で会没した軍人の慰霊塔や軍艦山城、長門、沖島などの鎮魂碑が、訪れる人もなく建ち並んでいます。
巨大な舟形をした大理石に刻まれた「国威顕彰」のスローガンを眺めていると、身も心も冷たくなってきたので、その場を立ち去ろうとしましたら、
原始海は生命の故郷であった
その海に果て、その海に眠る
戦友たちの御霊やすかれといのちながらえしものあい集い
再びいくさあらすなとねがうものなり
と書かれたひとつの墓碑銘が目に留まりました。
そのあとに続けて
浮雲一片流北辰
何人不起望郷情
有時霊魂亦環家
夜半南星漂蒼海
という七言絶句も書かれていました。井伏鱒二風に、
北極星に雲がかかれば
みんな故郷に帰りたい
いつかは君もお家に帰る
青い海からお星さまになって
といういい加減なほんやくで、いかがなものでしょうか。
♪冠詞がない日本語には思想がない 茫洋
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