Monday, February 22, 2010

デニス・ラッセル・デービス指揮シュトゥットガルト室内管弦楽団でハイドンの交響曲を聞く

♪音楽千夜一夜第111回

デニス・ラッセル・デービスは、なんと10年の歳月を費やしてカール・ミュンヒンガーが創立したシュトゥットガルト室内管弦楽団を指揮してハイドンの交響曲の全曲録音を果たしました。

これは昨2009年のハイドンイヤーにもっともふさわしいビッグイベントであり、全37枚のCDボックスがたったの5946円、1枚@わずか160円というお値段にもいたく感動して購入したのですが、どうにもこうにも残念無念な買いものでした。

デービスの演奏はECMレーベルに録音された近現代作品や最近のブルックナーではまずまずの成果を収めていましたが、交響曲の父の演奏を手掛けるには100年早すぎたようです。初期から中期の疾風怒涛時代の演奏があまりにも平凡でめりはりに欠け、いったいなにが面白くて演奏しているのかもわからない。まるで海底のナマコが猫じゃ猫じゃを踊っているような団子的無機的音響の連続に業を煮やして、後期のネームドシンフォニーを先に聞いてみましたが、主題の提示の明快さも、再現される主題の変奏の変化も、楽章ごとの緩急のつけかたも、テンポと音色の変化も切れ味が鈍く、すべてが格別の独創も企図もなくただただ凡庸かつ無感動に演奏されていくのです。

頭にきたので日頃愛聴しているドラティやアダム・フィッシャー指揮の全曲盤、さらにはヨッフムやセル、バーンスタイン、カラヤン、トレバー・ピノックなどとも聴き比べてみたのですが、これほどレベルの低い演奏と録音は皆無でした。強いてましな演奏を拾えば第105番とも呼ばれる協奏交響曲でしょうか。

解説によればトランペットとティンパニーだけが古楽器を使っているそうですが、その効果もまったく顕現していない。全曲をライブで録音したために聴衆の反応も分かるのですが、どの曲も拍手はまばらで(ブーイングこそ稀でしたが)、毎回きわめてうそ寒い空気が会場のメルセデス・ベンツセンターを冷え冷えと包みこむのが体感されます。

最新のデジタル録音の成果がそんなところで発揮されているとはデービス自身も予期しなかったことでしょう。ともかく「木戸銭を返してくれえ」と久しぶりに叫びたくなるような古典落語でした。仕方なく手元にあるボーザールトリオの9枚組でけたくそ悪く汚染された耳を懸命に洗い落としているところです。


♪またしても買うてしもうたりグルダの平均律第2巻 茫洋

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