Sunday, February 14, 2010

バレンボイム指揮スカラ座管で「アイーダ」を視聴する

♪音楽千夜一夜第109回

09年9月6日に行われたスカラ座の来日公演のライブを、録画で見ました。会場はパリのパレ・デ・コングレ、NYのエイベリーフイッシャーホール、両国の国技館と並ぶ世界最悪音響空間の神南馬小屋ホールですが、収録マイクのセッティングが絶妙であるために、自宅での視聴が会場最上席のそれに優に匹敵するとはどうにも皮肉なものです。

 オーケストラボックスに入ったスカラ座の管弦楽と合唱団の素晴らしさは、誰もが知る通り世界最高のレベルにあり、今回の「アイーダ」における第3幕のオケとコーラスの咆哮は、バレンボイムの乗りに乗った指揮ぶりとあいまって、強烈な劇的興奮を生みだしていました。これぞヴェルディの音楽を聞く醍醐味といえましょう。

とかく日本のオケは、長大なオペラや交響曲の終わりの箇所にさしかかると、まるでガソリンの切れかかった自動車のように息切れしてくることが多いのですが、外国のオケの大半はその正反対で、当夜のスカラ座管のように、むしろこの急坂からものすごい底力と登攀力を発揮します。

「アイーダ」の演奏においては、音響的クライマックスのピークが第3幕におかれていて、主役の2人が閉じ込められた密室で死んでいく最後の第4幕では、音響の激烈さではなく、音楽の内面的な意味と感情にものをいわせなければなりませんが、この難しい演奏課題を、指揮者は見事にクリアしていました。

表題役のヴィオレッタ・ウハマーナ、ラダメスのヨハン・ボータ、アムネリスのエカテリーナ・グバノワもその持てる実力を存分に発揮していましたが、それにもまして特筆すべきはフランコ・ゼフィレッリによる格調高く知的な演出で、豪華絢爛な美術装置の前で演じられるバレエの演技に力点をおくことによって、逆にこのドラマの悲劇性を鋭く浮き彫りにしていた点が素晴らしかったと思います。

♪3位になっても4位になっても彼女の人生は続く 茫洋

♪ポネル死せりされどゼフィレッリ残れりわが心に残る懐かしきオペラ演出家よ 茫洋

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