Thursday, February 04, 2010

文化学園服飾博物館の「パレスチナの民族衣装」展を見る

茫洋物見遊山記第8回&ふぁっちょん幻論第55回

新宿の文化学園服飾博物館では「パレスチナの民族衣装」展が3月14日まで開催されています。

聖地エルサレムを囲むパレスチナ地方には、イスラエルとアラブ両民族が政治的、人種的、宗教文化的に厳しい対立を続けている訳ですが、この会場ではヨルダン川西岸とガザ地区に分断されながらも軍事的強国イスラエルにゴリアテに挑むダビデのように礫で戦いを挑んでいるパレスチナの人々の民族衣装が多数展示されています。

アラビアのロレンスを思わせる男性の衣服も興味深いものがありますが、なんといってたっぷりとした着分の生地を贅沢に使い、大きなAラインに造型された女性の色彩豊かなドレスが目を引きます。

ドレスには花や木など自然のモチーフが金の糸などで刺繍されていて、とりわけ胸元に表現されたV字型などの大胆な文様が、エルサレムやラマラ、ガザ、ベツレヘムなど彼女たちの出身地毎のアイデンティティをあざやかに表現しています。

タータンチエックを思わせるこれらの美しい意匠は、先祖代々母から娘に手作業で伝えられ、その地域や部族や家柄の誇り高い象徴であったわけですが、その連綿たる歴史と文化的伝統が、20世紀後半のイスラエルの武断的攻勢と陰険な分断政策によって暴力的に断ち切られつつあることは断腸の思いです。

難民キャンプに追いやられたパレスチナ人たちが、ありあわせの素材と拙い技術でつむいだ貧しいドレスが、そのことを雄弁に物語っているようでした。


♪パレスチナの民族衣装を踏みにじるイスラエルの民の驕り昂ぶり 茫洋

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