♪音楽千夜一夜第42回
2002年のモーツアルト・イヤーに南仏エクサン・プロバンスの大司教館の中庭で行われたライブ公演である。
若き俊才ダニエル・ハーディングが古楽演奏のマーラー室内管弦楽団を勢いこんで振るのだが、ティンパニーの強打も夏の夜空に吸い込まれ、音も演奏も歌唱もすべてが散漫で薄っぺらに聞こえてしまう。こんなライブをよくも収録したものだ。
しかしさすがに見るべきはピーター・ブルックの演出で、シンプルな装置と色鮮やかな照明とシックな衣装を駆使して、あざやかに舞台を転換し、まるで現代演劇のように軽快に登場人物を操ってみせるが、地獄落ちの迫力は皆無である。
最後の六重唱を地獄に落ちたはずのドン・ジョバンニと、落としたはずの騎士の石像が脇に並んで聞いているというのは、いったいどういう意味なのだろう?
歌手は中堅どころの実力派だが、いずれも可もなく不可もないまずまずの出来栄え。ということは、この名作の演奏史に付け加えるべきなにものもないということだ。ああ、往年の大指揮者の音楽と大歌手の歌声がげに懐かしい。
米帝の手前勝手な金融危機ただ一言も世界人民に謝罪せず 茫洋
No comments:
Post a Comment